幸せな働き方改革サービス
幸せな働き方改革サービス
Menu
幸せな働き方改革サービス

深刻な人手不足に悩む建設業界、理由と改善点

健康経営ノウハウブログ編集部
2018/10/10 16:00:00

 株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所が行った「人手不足の実態に関するレポート」では、人数を確保できていない企業の内52.7%が「今後も人員不足が解消しない」と感じていると報告されています。有効求人倍率が2.88倍(全体は1.20倍)となり、まさに「仕事量に見合わない人員数」状態の建設業界において、深刻な状況となっています。人員不足解消法として、求人広告で補充するだけでは、根本的な問題解決にはなり得ません。この記事では、人手不足に陥る背景や改善点、どのようにしてこの苦境を切り抜ける方法を提案しています。自社と照らし合わせて参考にしてください。

 

建設業界の景況

2000年から新設工事の利益は右肩下がりで推移しています。2009年までに56.7兆円から33兆円にまで落ち込み、その後はほぼ横ばい状態を維持。維持・修繕工事の利益額は2000年~2011年まで目立った変化がありません。業界動向SEARCH.comによると、2011年に起こった東日本大震災への復興作業や設備投資などに起因して、その後は業界規模が拡大傾向にあります。

アベノミクスの掲げる「3本の矢」の1つが公共事業への投資となっています。老朽化したトンネル・橋・道路・建物などを建て直すために、建設業に従事する企業や職人たちの需要が高まりました。大型地震や台風が続き、更には東京オリンピックが控えている昨今の日本。インフラ整備に関わる業界は、今後も拡大を続けることが予想されています。仕事量が増えているのに対して、人材は減少した数値で横ばい状態を維持しており、少人数で対応するため工期は延長せざるを得ません。人手不足にあえぐ建設会社へのコストが余分にかかることになるのです。建設業界の景況の面から見ても、人材確保は急務となっています。

 business_53

人手が足りないのはなぜか

建設業界において、今後ますます技術者や職人が必要となることはお話した通りです。ここでは人手が足りていない建設業界の現状と、なぜこのような状況に陥ってしまったのかを推察します。

 

従事者数の推移

国土交通省が行った「建設労働需給調査結果」によって、建設技能労働者は2018年7月時点で1.2ポイント不足していることが分かりました。

出典:国土交通省「建設労働需給調査結果」

 

同省の「平成30年度建設投資見通し」では、建設投資は57兆1700億円(前年度比2.1%増)となることが予想されています。

出典:国土交通省「平成30年度 建設投資見通し 概要」

 

投資が増えるのはそれだけ建設業界の仕事が増えるということですから、これまで以上に技術者を含む人材が必要となることが自ずと分かります。

国土交通省の「建設投資、許可業者数及び就業者数の推移」によると、建設業従事者数は1997年に685万人とピークを迎え、2010年までは503万人になるまで右肩下がりに減少してきました。その後は横ばい状態を維持しており、これは2011年に起こった東日本大震災の復興作業に影響を受けたと考えられます。

出典:国土交通省「建設投資、許可業者数及び就業者数の推移」

 

西日本豪雨や北海道大地震の復興作業、そして2020年の東京オリンピック開催に向けてますます需要が高まる業界ですから、従事者数が横ばいのままでは、人手不足は深刻になるばかりです。

 

・1.リーマンショック後の職人離れ

世界的な金融危機であるリーマンショックが2008年9月に発生しました。これによって、建設業界では主に「資本金1億円未満の企業」が大打撃を受けることとなり、2009年における建設業倒産件数は4000件を超えています。リーマンショックという大不況を経験したことで、建設業従事者の数は減少していきました。減少した後の500万人という数値で停滞したのは2011年以後です。つまり東日本大震災という建設業の需要が高まった後でも、一度離れてしまった職人が建設業界に戻ってきていないことが分かります。

かつては、バブル崩壊後に会社を辞めた労働者を高単価で吸収していた建設業ですが、リーマンショック後には時給500円の職人やリストラされる職人が続出しました。経営層は「必要になったら呼び戻せばよい」と考えていたようですが、元請けからの誘いを断る職人が相次ぎました。精巧な技術が求められる職種でありながら生計を立てられないという時代を痛感した職人が、別の道を模索しようと考えても不思議ではありません。離れてしまった人材が戻ってきていないにも関わらず仕事量が増えているので、人材不足に陥るのはむしろ自然な流れだと言えます。

 

・2.若年層の建設業離れ

建設技能労働者の高齢化が問題視されていますが、総務省「労働力調査」をもとに算出した日建連の「建設業ハンドブック 2013」を見てみると、その傾向は顕著なものとなっていることが分かります。同調査では1997年における建設業従事者の年齢層と2012年での年齢層を比較しており、1997年時では全体の11.2%を占めていた「15~24歳」の年齢層は2012年では4.6%にまで落ち込んでいます。そして「25~34歳」の年齢層もまた、19.0%から15.7%まで減少していることが読み取れました。逆に増えた層は「35~44歳」と「55~64歳」、「65歳以上」となっているのです。

なぜ、業界の未来を背負うことが期待される若年層が建設業界から離れてしまっているのでしょうか。その背景には、他業種と比較して「労働賃金が安い」ことや「労働時間が長い」という先入観があるのではないかと考えられます。日本建設業連合会の行った「2018年労働時間等実態調査集計結果」が、その先入観を裏付ける形となりました。全産業男性労働者の年間賃金総支給額が約530万であるのに対して、建設業男性生産労働者は約390万。年間労働時間は全産業が1808時間となりましたが、建設業は2106時間という結果が出ています。他に就職先の選択がある若年層にとっては、あまり選ばない業界であることがデータとして明らかになりました。先手を打たなくては熟達した職人層が引退した後、建設業界は更なる人手不足に陥ることになります。

 

問題解消するヒントとモデルケース

これまでは人材不足に陥った背景を説明してきました。しかし、これから建設業に対する需要が高まっていくことを考えると、この問題を軽減させる打開策が必要となります。業界全体が一丸となってこの問題に取り組むことは必要ですが、それぞれの企業にもできることはあります。ここからは企業各々ができることのヒントとして、主に

  • 待遇改善
  • 雇用促進
  • 省工数化

の観点からお話していきます。モデルケースもご紹介しますから参考にしてください。

 

①待遇改善

 ・法定福利厚生の導入

法定福利厚生とは、雇用保険・健康保険・厚生年金保険・労災保険などの社会保険のことを指します。国土交通省は建設業に携わる企業のうち、社会保険に未加入の企業について対策を検討しました。3次下請けを主に担う企業の加入率は、2015年時点で未だ90%未満となっています。

労働者の立場としては社会保険が完備している方が安心できることは間違いありません。特に建設業では建築に従事していた際に、怪我をする可能性も十分にあり得ます。労災保険や健康保険は外せない重要なポイントでしょう。企業側からするとこれら社会保険を完備していることで、「健全な精神の会社」であることをアピールする1つの材料になります。

 

・法定外福利厚生/福利厚生サービスの利用

会社が任意で実施しているものが法定外福利厚生となります。通勤費手当や住宅手当、資格取得支援などがこれにあたります。

日経キャリア教育.netが日経就職ナビ会員3049人に対して行った「企業を選ぶ際に重視する点はどこか」というアンケートでは、「将来性がある(46.2%)」「職場の雰囲気がよい(38.7%)」に続き、「福利厚生が充実している」という回答が35%で第3位にランクインしています。「給与・待遇が良い」という回答は31.5%で、求職者が給与や待遇よりも法定外福利厚生に注目して就職活動を行っていることが明らかになりました

マンパワーグループが行った「人気福利厚生ランキング」では、「住宅手当・家賃補助(48.3%)」や「食堂・昼食補助(33.9%)」「人間ドックなど法定外の健康診断(33.0%)」がTOP3を占めています。「実際に利用した福利厚生で、あってよかったと思うもの」に対しては、「食堂、昼食補助(17.1%)」、「住宅手当・家賃補助(16.7%)」、「余暇施設、宿泊施設・レジャー施設などの割引制度(14.5%)」が上位を占めました。他にも家族扶養手当や育児休業など、求職者にとっては嬉しい制度があります。実際に企業で導入された手当は、日本建設業連合会が設定した「優良技能者手当て」や、東急建設の「マイスター認定」などがあります。企業側はこれらのような、ユニークな福利厚生の導入を検討してみましょう。

 

②雇用促進

新たな雇用ターゲット層として考えられるのは、外国人労働者、経験の少ない若者や正社員・パートタイムなど様々な雇用形態で働きたい女性です。「人手不足の実態に関するレポート」で「業種・雇用形態別 人材の過不足感」を調査した結果、建設業界は臨時社員やパートタイマー労働者が極端に少なく、従事者のほとんどが正社員で雇用されていることが明らかになりました。

また、2012年時点の建設業における女性の比率は、大手総合建設業の技術職で3.7%、建設業全体で13.9%という結果が報告されています。

出典:国土交通省「建設業における女性の活躍推進に関する 取組実態調査 」

 

全産業では42.3%ですから、建設業は約30ポイント差で女性が少ない業界であることが分かります。「女性採用に積極的に活動しているか」を問う設問に対しては、「行っている」「今後行う」と答えた企業が64.3%を占めています。実際に導入している福利厚生は「産前・産後休業制度」で、94.5%にのぼりました。

働きやすい社内設備や制度を整え、雇用形態に関する相談には柔軟に対応すると女性からの応募が期待できそうです。工事・建築現場で軽作業に従事する選択肢もありますし、現場に出ない事務職という枠で採用する選択肢もあります。

 

技能労働者不足は2009年を境として深刻さを増しています。経験がほぼない若年層や日本式の建築方法を知らない外国人労働者を採用するためには、ハローワークでの積極的な紹介や、引退した職人らが技術を伝授するなどの対応が必要です。しっかりとした教育体制が整っている企業であれば、技能労働者不足を徐々に軽減させていくことが可能です。また、若者が建設業に魅力を感じるような取り組みをすることが非常に重要だと言えます。企業側は女性・若者どちらに対しても、長期的に育成することを視野に入れて採用活動をすると良いでしょう。

business_55

③省工数化

工数とは仕事の作業量のことを表し、単位は「人月」です。省工数化とは、1人がひと月に負担する作業量を減らす試みのことで、労務費の節約や、職人の労働環境改善を目的として導入されています。ここでは、企業が実際に取り入れた省工数化の取り組みをご紹介します。

 ・鉄筋先組工法

地上での作業段階で前もって柱や梁などを完成させ、出来上がったものを図面に沿った場所へと持ち上げ、繋げる方法です。

  1. 釣り具の組み立て
  2. 柱・梁の組み立て(配筋)
  3. 吊り上げ・連結作業

といった手順で進められ、この手法を導入すると、建築にかかる工期の短縮が可能になります。

JFE条鋼株式会社ではこの組工法を用いたことで、在来工法に比べ1フロアーあたり0.5日分工数を短縮したそうです。更にこの方法と相性が良いと言われている機械式継手を併用することで、通常よりも1フロアーあたり1日分工数が短縮できたと報告しています。これによって、従来の方式に比べて1日当たり約7%もの工数削減に繋がりました。

 

・ラス型枠・鋼製型枠

ラスと呼ばれる金属網や銅製の型枠を、建物の基礎部分や地中の梁に用いることがあります。かつてはベニヤを用いた枠を使用しており、使用後焼却処分することで二酸化炭素が発生することが問題視されていました。ラス型枠や銅製型枠は環境に配慮した手法だと言えるのです。

戸田建設株式会社では、このラス型枠を地中梁に用いることで工期の短縮を図り、建築面積15000㎡の工事を40日で完了させた実績があります。アイワスチール株式会社によると、「この手法を用いることで、工期は本来の半分~2/3程度まで短縮することができる」としています。

銅製型枠も工期が短縮できるものですが、厚さ0.04mmで1㎡あたり約4.8㎏と軽量なのが特徴的です。合板型枠と比較しておよそ1/15の厚さに1/3の重さとなっており、作業にあたる職人たちにとって扱いやすいものであると言えます。型枠の搬出が不要であるため、工期の短縮に繋がるのです。

 

ラス型枠・銅製型枠ともに設置が簡単で枠の回収や解体作業などに労力を使わなくて良いため、職人たちの負担を軽減できます。先述した鉄筋先組工法と組み合わせて使用すると、更なる工期短縮に繋がりますね。

 

・プレキャスト・コンクリート工法

建築の基本となる部分を工場で組み立て運搬し、現場で組み立てる工法です。現場で製造する必要がなくなりますから、当然それにかかっていた工数を短縮することができます。本来現場作業で割いていた人員も削減可能となりますし、組み立てることがメインになりますから、熟練した職人に頼らなくても良い工法です。工場で製造することで安定した品質の部材が供給可能となる点も魅力的ですね。

大成ユーレック株式会社によると、プレキャスト・コンクリート工法を導入することで、従来に比べ約2か月もの工期を短縮できると言われています。三井住友建設は、マレーシアで行っている建設プロジェクトにこの工法を用いたことを発表しています。工期の短縮化やコスト削減の面でも役立ちますが、職人の技術レベルに差がある現場でこそ用いたい工法ですね。

 

まとめ

人材不足に悩んでいながら、仕事量は増えている建設業。求職者にとって魅力を感じるポイントや、省工数化を図ることで人員不足を軽減させる例もご説明しました。冒頭でお話した通り、人材不足に悩む企業は数多くあります。しかし、「解消する見通しが立たない」と感じるかどうかは、それぞれの企業の取り組みにかかっています。今回の記事を参考にして、実行可能な取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

Email登録で最新情報を入手