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大手企業が取り組む“健康経営”とは?企業事例と完全解説

健康経営ノウハウブログ編集部
2018/10/24 9:00:00

働き方改革とセットで語られることの多い「健康経営」。そもそも健康経営とは何なのかという定義や、政府も積極的に健康経営を推進している理由、社会的な背景なども知らないと、具体的にイメージしづらいのではないでしょうか。

健康経営とは、企業が戦略的に従業員の健康に投資することによって企業の長期的な発展を目指す経営手法のことです。


少子高齢化社会を迎え、新しい労働力の確保は難しく、現在働いている従業員の高齢化という問題が浮上しています。その結果、人手不足による長時間労働の常態化、精神疾患による長期休暇による他社員への負荷増大という負のスパイラルに悩む企業は少なくありません。

この問題を解決するために注目を集めるようになった考え方が健康経営です。政府も健康経営にはかなり力を入れており、経済産業省が「健康経営の推進」を掲げて様々な取り組みを実施しています。

すでに大手企業では健康経営に取り組んでおり、成果を上げているとして「健康経営銘柄」や「健康経営有料法人」に選定されている企業も増えてきています。

本記事では、健康経営の概要について、図を見ながら説明した後、日本での健康経営の現状、取り組むメリットなどを紹介します。最後に、「健康経営銘柄」や「健康経営有料法人」に選ばれている大手企業から抜粋して、健康経営の事例もまとめました。

これから健康経営のことを学びたいという方や、具体的な事例を参考にして自社の健康経営に生かしたいという方は、ぜひ最後までご覧いただき、本記事の情報をお役立てください。

 

図で解説!健康経営

健康経営について、経済産業省の、ヘルスケア産業課が2018年7月に作成した「健康経営の推進について」より図を抜粋して説明します。business_162 

出典:経済産業省 ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」P13「健康経営とは」より抜粋

 

健康経営は、まず企業理念という長期的なビジョンに基づいた経営理念を土台として、人的資本に投資をします。健康経営の最終的な目標は、業績向上、ひいては企業価値向上です。最終目標に至るまでの間、会社内では以下の効果が見込まれます。

 

  • 従業員が健康になり仕事のパフォーマンスが上がる
  • 従業員の離職率低下
  • 優秀な人材が確保しやすくなる
  • 経営の基礎体力向上による経営課題の解決
  • 組織の活性化と生産性向上
  • 企業の成長が促せる
  • イノベーションの源泉獲得

 

また、健康経営を実践する過程において、従業員が健康になることで社会へも少なからず良い影響を与えます。国民の生活の質が向上するほか、ヘルスケア産業の発展が見込まれ、現在大きく増加している国民医療費が適正な値に抑制できるのではないか、との予測です。

逆に、健康を無視した不健康な経営状態では、逆のことが起こります。従業員が休む間もなく忙しく働く状況が常態化すると、誰かが倒れたとき、周囲への負荷が高まり、連鎖して体調を崩す従業員が出てくる可能性が高まります。

病気で退職する従業員が増えると採用コストも高まりますが、離職率が高くなった状態では、良い人材が集まる可能性は低くなるばかりです。

労働力がいくらでも確保できた時代とは違い、今は少子高齢化で労働者人口が減り続けています。このような状況では、健康経営が企業にとっていかに重要な経営手法なのかがお判りいただけるのではないでしょうか。

 

健康経営に取り組む日本

日本では、政府が主体となって健康経営の推進に取り組んでいます。主な取り組みとしては、経済産業省が「健康経営の推進」として、東京証券取引所と協力して2015年より毎年「健康経営銘柄」として24~26社を選出。各業種から1社ずつを選定しています。

2015年から4年連続して「健康経営銘柄」として選出されている企業は以下の通りです。

  • 花王株式会社
  • テルモ株式会社
  • TOTO株式会社
  • 株式会社大和証券グループ本社
  • 東京急行電鉄株式会社
  • SCSK株式会社

 

もう一つの施策は「健康経営優良法人認定制度」です。大規模企業と中小規模企業に分けて、それぞれ健康経営の認定基準を設け、その基準をクリアした企業から申請を受けて、日本健康会議が審議して認定します。

日本政府のこうした取り組みは、2015年に初めて「健康経営銘柄」を選出して以降、マスコミでも多く取り上げられるようになり注目されるようになりました。現在では、大規模企業が中心となって健康経営が広く取り入れられるようになってきています。

 

健康経営が日本で推進される背景

ここまで健康経営が日本で推進されている背景には、すでに深刻化している少子高齢化があります。経済産業省 の「健康経営の推進について」に掲載されている、日本の将来人口推計についてのグラフをご覧ください。business_165 

出典:経済産業省 ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」P3「超高齢社会の課題 」より抜粋 2018年7月

 

日本の人口が減り始めていると同時に、真ん中の青い労働者人口に当たる部分(15~65歳)がどんどん減少しています。高齢者の数はあまり変わらないのですが、全体数に対する高齢者層の割合としては増加していく様子がよく分かるグラフです。高齢化が進んでいる原因は、若年層が急激に減少しているためであり、今後若年層の労働力確保はどんどん難しくなっていくことが予想されます。このような超高齢化社会における懸念事項には以下の3点が挙げられます。

 

  • 社会保険日の増加により国家財政のひっ迫
  • 生産労働人口の減少による国力低下
  • 介護の負担増加により労働力が介護に取られてしまう

 

この状況に対策するには、国レベルでの対応が必要だということで、現在の対策が取られるようになったのです。

各企業においても、従業員の高齢化が進み、年をとっても働き続けてもらいたい方向に行かざるを得なくなることが予想されています。今いる従業員に、いかにして長く働き続けてもらうかにより、企業の業績に大きな影響が出る時代になりつつあるのが現状です。

 

健康経営に取り組むべき企業とは

健康経営に取り組むべき企業とはどのような企業でしょうか。現状の状態が以下に当てはまるようなら、早急に健康経営に取り組むべきです。

  1. ストレスチェックの結果が悪い
  2. 長期休業者が多い
  3. 人材不足で、労働時間が長い
  4. 中高年の従業員が多い

これらの状況を、より深く確認していきましょう。

 

1.ストレスチェックの結果が悪い

ストレスチェックは「労働安全衛生法」により義務付けられた検査です。労働者が 50 人以上いる事業所では、毎年1回、この検査を勤続1年以上で所定労働時間の4分の3以上勤務している全労働者に対して実施しなければなりません。この検査は自己チェック形式で、簡単な質問に答えていくことで、どの程度ストレスが溜まっているかが分かります。この結果で、メンタルヘルスの状態がある程度把握可能です。チェック結果の悪い従業員は、産業医の面接、カウンセリングなどの対応をしていきます。

ストレスチェックの結果は、個人の結果だけに注目するのではなく、組織単位での確認も重要です。部署、年代、性別、役職などの単位で集計してみると、特にストレス負荷の高い組織・集団が鮮明になります。

特にストレスの多い組織・集団に対してストレス緩和対策を取ることはもちろんです。しかし会社全体としてストレスチェックの結果が悪いなら、局所的な金融対策を取る一方で、根本的な対策として健康経営を取り入れることを検討するべきでしょう。

 

2.長期休業者が多い

厚生労働省の「平成29年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間、メンタルヘルスの悪化による1ヶ月以上の長期休業者や退職者の割合は事業所全体で長期休業者は平均0.4%、退職者は平均0.3%という結果でした。自社の長期休業者が全従業員数の0.4%以上を占めているなら、「長期休業者が多い」という条件に当てはまると考え、健康経営に取り組むことを検討すべきです。

参考までに、事業規模別と業種別の長期休業者や退職者の割合をグラフや表で確認しておきましょう。

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出典:厚生労働省の「平成29年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 事業所調査」のP5より抜粋

 

全体的な傾向として、事業所規模が大きくなるほど長期休職者が多く、規模の小さい会社は退職してしまう傾向にあることが分かります。小規模の企業の場合、長期休業者を抱えておけないのではないかと予測される結果です。

100名未満の企業は、メンタル悪化で退職していった従業員の割合にも目を向けて、多いようならやはり健康経営に取り組む必要があると考えられます。

business_167出典:厚生労働省の「平成29年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 事業所調査」のP5より抜粋

 

また、業界別でみると、長期休職者の割合が多いのは情報通信業と金融・保険業で、退職者が多いのは運輸・郵便業であることが分かります。もちろん個々の企業の状態にもよりますが、これらの業種も、健康経営に取り組むべきと言えるでしょう。

 

3.人材不足で、労働時間が長い

人材不足で労働時間が長くなりがちな企業も、健康経営に取り組むべき会社です。少子高齢化の影響でこれまでどおりの若い労働力を確保しにくくなっている昨今では、人材不足に陥っている企業は少なくありません。労働環境が悪化数と離職率が高くなり、採用活動をしても人材を確保することが難しく、結果的に人材不足が続いて職場環境を変えられません。

健康経営を取り入れることで、人材を確保できる可能性は高まります。経済産業省は2016年、就活生や就活生の親が就職先に臨む勤務条件等を質問しました。その結果「従業員の健康や働き方に配慮している」との回答が就活生で43.8%、親で49.6%とどちらも半数近くの高い関心度を示しているという結果でした。

このように健康経営にしっかり取り組むことが労働力の確保にもつながります。恒常的な人材不足で、労働時間が長期化してしまっている企業ほど、健康経営に取り組むべきと言えるでしょう。

 

4.中高年の従業員が多い

少子高齢化は、従業員高齢化にもつながります。すでに中高年の従業員が多い職場では、従業員が生活習慣病や脳卒中、がんなどの病気になって長期休業するリスクがかなり高まっていると考えてください。今は順調に職場が回っているとしても、平均年齢が高くなるにつれ、誰かが倒れる確率は高まります。小規模な企業の場合、一人抜けた分の穴は大きく、周囲に多大なストレスがかかり連鎖して長期休業者や退職者が出るかもしれません。

このような状況のため、従業員が高年齢化している企業ほど、早急に健康経営を導入する必要があります。

 

健康経営に取り組むべき企業の特徴を4つ紹介しました。自社にも当てはまりそうな特徴はありましたか?それでは、実際に健康経営を導入するにはどうすればいいでしょうか。

 

健康経営導入および運用の手順

健康経営を導入するには、具体的にどのような手順を踏み、どのように運用していけばいいかについて説明します。大まかには、以下の5段階で進めていき、後は、(3)~(5)を繰り返していくというイメージです。

  1. 健康経営を行うことを告知する
  2. 組織の体制作り
  3. 課題の確認
  4. 計画作成と実行
  5. 実行結果の精査と実行計画のブラッシュアップ

 各ステップについて順番見ていきましょう。

 

1.健康経営を行うことを告知する

まずは、健康経営を行うことを社内外に告知、宣言します。経済産業省の優良健康経営法人の認定基準でも定義されている「経営理念(経営者の自覚)」という段階に当てはまるステップです。

健康宣言は、アニュアルレポートや統合報告書等での発信、社内報や会社のイントラページ、公式サイト、ニュースリリースなどの手段で社内外に告知します。小規模の企業であれば、朝礼などで発表してもいいでしょう。

この段階で経営者が自ら定期健康健診を受診して、従業員へ理アピールすると告知に説得性が増します。

 

2.組織の体制作り

次に、組織の体制作りを検討します。経済産業省の「健康経営優良法人(大規模法人部門)2019認定要件」によると、大規模企業の場合、認定を受けるためには以下は必須です。

  1. 経営層の体制:健康づくり責任者が役員以上
  2. 保険者との連携:健保等保険者と連携

 

健康経営を推進するためには、ある程度強い権限のある人が旗振り役として必要です。そのため、経営者か経営者に準じる上層部の役員から健康づくり責任者を出す必要があります。

また、健保など保険者との連携も認定基準の必須項目です。保険者との連携は深い部署も組織体制に組み込む形になることが多いでしょう。各職場ごとの体制は、すでにある労働安全衛生委員会を活用して、健康経営の組織を兼任させる企業が多く見受けられます。労働者の健康やメンタルヘルスなど被る要素も多いので、しっかりとした体制があるなら、健康経営に関する組織も同じにするとよいでしょう。

組織作りの段階で健康経営にかかわることになった関係者に対しては、専門の外部期間での研修なども行い、健康経営に関する知識を深め、一人一人が自社に当てはめて考えられるようにします。教育まで含めての組織づくりを考えましょう。

また、健康経営用のソリューションを取り入れたいなら、この段階で健康経営ソリューションに詳しいコンサルタントも参画してもらうことも検討します。

 

3.課題の確認

組織の体制が固まったら、課題の確認に移りましょう。自社は健康関連でどのような課題を抱えているのかを確認します。確認方法としては、年1回義務付けられているストレスチェックや、従業員がこれまで受診してきた健康診断の情報を分析することから始めましょう。

定期健診の受診率が100%でなかったり、ストレスチェックをしていなかったりするなら、まずはこの2点を最重要課題として取り組んでください。そしてデータを収集した後に追加の課題を確認するようにしましょう。

課題を検討する際は、健康経営などに詳しい担当者や産業医などと連携することで、適切なアドバイスが得られます。場合によっては健康経営のコンサルティングを入れても良いでしょう。

課題の洗い出しをきちんと行わないで「ふわっと」計画作成してしまうと、実態からずれた対策をしてしまうことになります。課題の確認手法は、後から対策実行後の検証にも使いますので、きっちりと決めておき、何回も実行できる方法を確立しておくことが重要です。 business_16-2

4.計画作成と実行

課題の洗い出しが完了したら、次に健康経営の計画を作成して実行に移します。優良健康経営法人(大規模企業部門)の認定基準では、計画検討と実際の対策について、項目を掲げていますので、その項目も確認しながら計画作成と実行について見ていきましょう。計画作成には、課題の洗い出しとも関連しますが、定期健診受診率を100%にし、ストレスチェックの結果もインプットに欲しいところです。

現状この2点が未達なら、今年度は集中してこれらの目標を達成してから、次年度以降本格的な健康経営を目指す、という動きにするとよいでしょう。

定期健康診断とストレスチェックの結果が活用できる状態にあれば、健康増進と過重労働防止を目標に、具体的な計画を策定します。

認定基準では、計画作成と対策を15項目設定し、そのうち12項目以上を実施することとなっています。15項目の内、「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」の4項目については必須とも言える内容のため必ず行いましょう。残り11項目のうち8項目以上を実施すると優良健康経営法人認定の申請が可能です。11項目の実施内容は以下の通りです。

 

【健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワークエンゲイジメント】

1.ヘルスリテラシーの向上

⑤管理職又は一般社員に対する教育機会の設定

2.ワークライフバランスの推進

⑥適切な働き方実現に向けた取り組み

3.職場の活性化

⑦コミュニケ-ションの促進に向けた取り組み

4.病気の治療と仕事の両立支援

⑧病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取り組み(⑮以外)

 

【従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策】

6.保健指導

⑨保健指導の実施及び特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み

7.健康増進・生活習慣病予防対策

⑩食生活の改善に向けた取り組み

⑪運動機会の増進に向けた取り組み

⑫受動喫煙対策に関する取り組み

(※「健康経営優良法人2019」の認定基準では必須項目とする)

8.感染症予防対策

⑬従業員の感染症予防に向けた取り組み

9.過重労働対策

⑭長時間労働者への対応に関する取り組み

10.メンタルヘルス対策

⑮不調者への対応に関する取り組み”

引用元:経済産業省の「健康経営優良法人(大規模法人部門)2019認定要件」より認定基準の「3.制度・施策実行」から一部を抜粋

 

「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワークエンゲイジメント」で定められた項目は、健康経営を進めるためには重要な項目です。従業員に健康系についての理解を求め、対話を進めてワークライフバランスの推進なども行います。この土台は重要なので、できれば計画に組み入れたいところですが、他に行うべき項目が明確になっていればそちらを優先しても問題ありません。

ただ、従業員の理解を深める部分は、最初から進めておいた方が健康経営対策の効果が上がると考えられますので、優先しておきたい項目です。

実行する項目が決まれば、次に具体的なアクションを決めます。例えば、「管理職股は一般社員に対する教育機会の設定」なら、「4月×日に管理者研修を2日間、6月×日に一般社員に対する研修を1日間」といったような形ですべての項目に対して具体的方法に落とし込みましょう。

ここまでで計画作成は完了です。後は、計画に合わせて対策を実行していきます。

 

5.実行結果の精査と実行計画のブラッシュアップ

健康経営は、ただ実行しただけでは高い効果は見込めません。毎年の実行結果を精査して、成果が出たかどうかを確認し、実行計画をブラッシュアップすることで初めて大きな効果が出ます。各実行結果そのものの数値はもちろんのことですが、次年度に行う定期健康診断とストレスチェックの結果を精査してください。これらの内容に改善が見られない場合は、

健康経営のメリットは主に以下の4点です。

 

健康経営のメリット

  1. 生産性アップ
  2. リスクマネジメント
  3. 企業が負担する医療費の軽減
  4. 企業のイメージアップ

順番に解説していきます。

 

メリット(1)生産性アップ

健康経営を取り入れることで、生産性アップが可能です。休職するまでにはいたらなくても、何となく不調な従業員が元気になると、それだけでも仕事の生産性が上昇します。

健康日本21フォーラム「疾患・症状が仕事の生産性などに与える影響に関する調査」では、業務遂行能力を通常時・各種体調不良時で自己採点した結果を公表しています。この中で、メンタル面の不調時は自己採点で平均56.5点と半分近くまで下落。メンタル面の不調は仕事に大きな影響を与える要素をうかがわせる結果です。

メンタル的な不調はミスも多くなるため、自分だけでなく周囲も手を取られ手戻りのコストが大きいのですが、このコストも抑えられます。メンタル面の不調は、肉体的な不調に比べて目立たず、深く進行している場合が少なくありません。健康経営により、メンタル面のケアが進むと、早めに手が打てるようになり、従業員の体調が元に戻るまでの時間も短縮できます。

 

メリット(2)リスクマネジメント

従業員の健康を守ることは、企業にとってリスクマネジメントにもつながります。健康状態が良くないと、仕事で怪我をする可能性が増大し、従業員の健康を損なうだけでなく労働災害で多額のコストがかかることになりかねません。

万が一従業員が過労死したとなると、遺族からの訴訟リスクも出てきます。新聞沙汰になれば、企業イメージの損失は計りしれません。これらのリスクをなくすためには、健康経営で地道に従業員の健康を改善していく方法が、遠回りなようでいて一番の近道です。

 

メリット(3)企業が負担する医療費の軽減

健康経営は、企業が負担する医療費も軽減できる施策です。従業員が病気やケガで治療をすると医療費がかかりますが、企業側も医療費の一部を負担しています。従業員が不健康になると、企業側の負担増も避けられません。

従業員一人一人は大きな額ではなくても、従業員数が多いと医療費の負担増は会社の経営上も問題です。従業員に健康管理を任せるのではなく、企業が率先して従業員の健康に投資することが、医療費の節約につながります。

 

メリット(4)企業のイメージアップ

健康経営に取り組むことで、企業のイメージアップにつながる点も大きなメリットです。健康的な経営をしているというイメージが定着すると「この会社で働きたい」と思う求職者が増える可能性が高くなります。

その証拠に、新卒の就活生やその親は、従業員の健康に配慮した取り組みを行っているかどうかを企業を選ぶ上で重視しています。これからどんどん労働力確保が大変になる中で、健康経営をしているかどうかによって、入社希望者が増える可能性がある点は大きなメリットです。

ここまでで、健康経営の注意点を確認してきました。では、逆に健康経営に取り組む上で注意するべき点はあるのでしょうか。

 

健康経営の注意点

健康経営に取り組む上で注意しなければいけない点もありますのでご紹介します。

  • 健康経営の重要さを全体に伝える必要がある
  • トップの理解を得る

これらの2点について詳しく見ていきましょう。

 

注意点(1)健康経営の重要さを全体に伝える必要がある

健康経営は、一見すると直接業績アップに結び付くものではないため、社内全体でコンセンサスを得るにはなかなか難しいかもしれません。健康経営を進める土台作りとして、全従業員と管理者に対してそれぞれ研修をしますが、この時に健康経営の重要さを伝えましょう。特に管理者は、部下の労務管理も行う重要な役割を担っています。管理者たちが重要性を認識しなければ、部下も健康経営を実践しづらくなりかねません。

健康経営を実践していかなければ、まわりまわって自分たちが苦しくなるばかりだということを認識してもらうよう、説得力のある数字などを示してしっかり説明しましょう。

 

注意点(2)トップの理解を得る

健康経営は、トップが自ら率先してやらなければ全社へ浸透しにくくなります。トップに対しても、健康経営の重要性を分かりやすく説明して、今対応しないと大変なことになることを丁寧に伝えてください。

なぜ重要なのかを説明するためには、やはり具体的な数字を出しながら、このままでは経営が立ち行かなくなる危険性があることを伝えましょう。トップに健康経営を理解してもらうことが、健康経営の第一の動きとなります。

これら2点の注意事項に気を付けて、健康経営を実践するための土台をしっかり固めてから、計画を進めていきましょう。

 

健康経営に取り組む企業の好事例

ここからは、健康経営に取り組鵜企業の好事例について解説していきます。ここで取り上げる企業は、どこも健康経営銘柄や優良健康経営法人に選出された大規模企業です。数社をピックアップして、健康経営の具体的な取り組み例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

事例(1)株式会社フジクラ
フジクラは、2018年の県個経営銘柄に選ばれた通信ケーブルや電線を製造するメーカーです。業種では、非鉄金属に分類されます。創業年は1885年と古く、昔ながらの日本企業です。

フジクラの健康経営活動は、2014年に健康宣言をして本格化しました。取り組み事例はかなりユニークかつ多彩なので、自社に取り入れられそうなものがあるかどうかチェックしてみてください。

 

共用コーナーに「雲梯(うんてい)」設置

簡単に身体を動かす器具といて、自販機前の共用コーナーに「雲梯(うんてい)」を設置して、ストレッチに使えるようにしました。雲梯は、ぶら下がるだけでも背筋が自然に伸び、腕の力を使う運動器具です。誰でも簡単にできて、肩こり等の解消、腰痛の予防などに効果があるということで、利用する社員は多いそうです。

 

スタンディングオフィスの試験導入

座ってばかりで運動不足になりがちなオフィスに、昇降可能なデスクを設置し「スタンディングオフィス」に。フジクラの健康経営推進室で試験的に行われている試みです。

スタンディングワークは、アメリカではGoogleやFacebook、日本でも楽天などが導入している新しいワークスタイル。仕事に集中できるという生産性の向上が見込めるだけでなく、肩こり解消や姿勢が良くなるなどのメリットがある働き方として知られています。

フジクラでは、健康面のメリットに注目して試験導入し、その効果を確認中です。

 

自転車通勤プログラム『ジテ通』

通勤時間を健康増進とリフレッシュに役立てるという目的で導入した自転車通勤プログラムも、ユニークな取り組みです。ママチャリではなくスポーツバイクを会社が貸与。ママチャリでは得られない爽快な走りを楽しむことで、健康増進を目指します。

 

歩数イベント・キャンペーン

2013年より継続中の「歩数イベント・キャンペーン」は、歩数計と健康管理プログラムを連携して、どれだけ歩いたかの「見える化」を実施。

 

TFTヘルシーランチの販売

TFTとは、「TABLE FOR TWO」の略で、途上国と先進国の「食」に関する不均衡を解決していく社会貢献活動のことです。フジクラでは、TFT活動と連動した健康系絵栄活動として、週1回TFTヘルシーランチとして社員食堂のメニューに追加。低カロリーのヘルシーメニューで、1食食べるごとに途上国に給食が1食プレゼントされる仕組みになっています。 business_25

事例(2)株式会社ローソン

ローソンは、健康経営銘柄に4年連続で選ばれていて、健康経営を進める大企業の中でもかなり進んだ取り組み例が多く見られます。展開するコンビニのイメージも「健康」推しで、2013年よりコーポレートスローガンを「マチの健康ステーション」に設定。企業イメージとしても健康経営は重要な施策となっています。

健康経営活動が活発なローソンの取り組み例を早速見ていきましょう。

 

ローソンヘルスケアポイントで健康ならポイントゲット

2015年より「ローソンヘルスケアポイント」プログラムを実施。このプログラムでは、自分の健康診断結果から健康に関する目標を設定し、次年度の健康診断で生活習慣病になっていなければポイントが付与される仕組みです。健康に関するe-ラーニングや健康イベントへの参加でもポイントが与えられます。

また、このプログラムをより良く使ってもらうために、定期的にプログラム内容のメンテナンスも実施。グループ内での利用者も順調に増加し、生活習慣の改善などにも効果を発揮しています。作ったままにはせず、ブラッシュアップしている点が成果を出すポイントです。

 

厳しいペナルティで定期健康診断受診率を100%に

定期健康診断受診率を100%にするため、ローソンでは2012年から厳しいペナルティを導入しました。定期健康診断未受診の本人とその上司の賞与を本人15%、上司10%カット。さらに、再検査や治療が必要な場合も本人の賞与を一部カットと、かなり厳しい制度です。 しかし、この思い切った制度導入で、定期健康診断と再検査の受診率ともに100%に。定期健康診断や再検査の受診をいくらフォローしても行かない人は一定数います。

ローソンヘルスケアポイント制度を導入し、定期健康診断を受けに行くことで多少のプラスがあっても動かない人には、ペナルティを課すしかないと判断したのでしょうか。上司も、自分の賞与に響くため厳しくフォローせざるを得ません。

発表当時は、ニュースでも取り上げられ話題になったこの施策ですが、結果として受診率が100%になった点は事実で、かなり有効な施策です。

 

健康90日チャレンジ実施

毎年、「健康90日チャレンジ」と銘打ち、3カ月間継続して行う健康イベントを開催しています。2017年度は以下の4項目を設定しました。

 

  • 歩いて元気(8,000歩以上を目標に歩いてアプリに登録)
  • 朝ごはんで元気(朝ごはんを食べたらアプリに登録)
  • 生活リズムで元気(生活習慣をアプリに登録)
  • ロカボで元気(糖質コントロールによるダイエット)

 

チームや個人で参加でき、日々アプリに記録します。チャレンジ期間が終わったら成績の良かった上位者にはPontaポイント進呈という仕組みです。期間を決めることで、参加意識が高まる健康イベントとして定着しています。

 

様々なアプリを使って数値を記録

健康90日チャレンジでも説明しましたが、様々なアプリを使って歩数や生活習慣を記録する環境があるだけでも、健康に良い影響を与えます。

一時期「レコーディングダイエット」が流行りましたが、日々の生活を記録することで、生活の「見える化」ができ、自分で改めるべき生活習慣に気づけるようになるためです。

 

ストレスチェックや各拠点での健康セミナーも定期的に実施

健康経営のベースとなる、ストレスチェックや各拠点での健康セミナーも定期的に実施。ユニークな取り組みだけでなく、健康経営の土台づくりとなる地道な活動もしっかり継続しています。

 

事例(3)株式会社タニタ

体重計の製造で有名なメーカー、タニタもまた、4年連続で健康経営銘柄に選出されている大規模企業です。

社員食堂でヘルシーメニューが多いことでも有名で、社員食堂のメニューを再現した店舗やレシピ本、おかずの素など、関連製品で名前を見かける人もいるのではないでしょうか。そんなタニタの健康経営は、健康増進プログラム「タニタ健康プログラム」を軸に、内容をその時代に合わせてブラッシュアップさせている点が大きな特徴です。

毎年蓄積されていく健康関連のデータもうまく利用して施策を作っている点が参考になりますので、ぜひご覧ください。

 

健康増進プログラム「タニタ健康プログラム」

2009年から始まった「タニタ健康プログラム」は、健康に関するデータを蓄積することで、健康管理のPDCAサイクルを回すことを目的としたシステムです。分かりやすいキャッチフレーズ「はかる・わかる・気づく・かわる」が、タニタ健康プログラムの内容をうまく表現しています。

実際の仕組みを説明すると、通信機能を持った歩数計と社内に設置している体組成計を利用して、健康に関するデータをインターネット上のサーバーに転送して蓄積。データの内容を参照できるようにしています。このデータを使って、歩数イベントや、メタボな従業員に対する生活習慣病の保健指導なども実施。ただ参照するだけではなく、各種健康活動に役立てられています。

 

体組成計を家庭用からプロフェッショナル用にすると利用率アップ

健康プログラムで使っていた体組成計を、一般家庭用からさらに精密に計測できるプロフェッショナル用に変更すると、社員の利用率がアップしました。すでにある機器の使い勝手を向上させることで、施策の効果をさらに高めた取り組み例です。

 

歩数計から活動量計に変更してさらに運動の見える化を推進

それまで配布していた歩数計から活動量計に変えることで、歩数だけでなく消費エネルギーを見える化。従業員の家族にも活動量計を渡し、家族とともに健康活動に取り組めるようにしています。

摂取エネルギーに対して、消費エネルギーは意外と少ないものです。消費エネルギーがはっきり見えるようになることで、食事や運動に対する意識はさらに高まります。

 

ユニークな朝食欠食対策

活動量計を全員に配布していることで可能となった健康施策として、朝食の欠食対策があります。活動量計は個人のIDに紐づいているので、朝食を食べていない従業員に、自販機での朝食提供が可能です。

朝食を抜くと、午前中頭が働かず、仕事の生産性も下がると言われています。従業員一人一人にひもづいている活動量計から分かるデータで、朝食のフォローもできる点に着目した、ユニークな施策です。

 

メタボ社員を対象に「スマートライフステイ」を実施

2016年には、メタボ社員を対象に、ヘルスツーリズム「スマートライフステイ」を実施しています。ヘルスツーリズムとは、健康回復や健康増進を目的として行う旅行のことで、スマートライフステイとは宿泊型の新保健指導プログラムのことです。

スポーツや観光などの娯楽もセットになっていることで、快適な環境を提供することで健康問題に対するやる気を喚起するようなプログラムとなっています。メタボ社員への集中的な対策により、将来の医療費抑制を図る取り組み例です。

 

まとめ

どの企業も、健康経営銘柄に選出され、健康経営の実績を積んできています。各企業共通の特徴は、どんどん新しい施策に飛びつくのではなく、一つの軸となる施策を毎年ブラッシュアップして、より良いものへと進化させている点です。

健康経営に取り組む際、最初から大きな施策をやろうとするのではなく、スモールスタートで始めてみてはいかがでしょうか。軸となる施策はしっかり決めて、毎年PDCAサイクルを回していくことで、自社に最適化された健康経営活動になっていきます。

健康経営を始められる際、参考にして頂ければ幸いです。

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