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中小企業こそ取り組むべき健康経営とは

健康経営ノウハウブログ編集部
2018/10/23 9:00:00

「健康経営」という言葉を目にしたことはありますか?少子高齢化が進む日本では、労働力が不足することははっきりしています。新しい人材の確保が難しくなる中で、どのように労働力を確保するかという課題に対する取り組みが数多くなされてきました。

例えば、これまで働きたくても働けなかった女性や高齢者などの人材を活用しようという動きもそのひとつです。このような状況下で、今現在働いている従業員に、いかにして健康で長くは働いてもらうかということにも目が向けられるようになりました。

このような流れの中で、取り組みのひとつとして登場した考え方が健康経営です。

 

経済産業省が「日本再興戦略」の取り組みの一環として健康経営推進を打ち出した後、大企業は近年社員の健康問題に取り組み、一定の成果を挙げてきました。経済産業省は、2015年から東京証券取引所と共同で「健康経営銘柄での選定を開始しました。原則1業種1社を「健康経営銘柄」として選定します。この取り組みは、健康経営に取り組む優秀な企業が社会的な評価を受けることで、健康経営の発展を促すことが目的です。

しかし中小企業に目を向けると、健康経営の考え方はまだまだ定着していないのが現状です。その一方で、人手不足の深刻な影響は中小企業の方から出始めいるのも事実で、社員にこれまで以上の負荷がかかる危険性は上がり付付けています。労働者人の約70%は中小企業で働いていており、中小企業も健康経営に取り組まなければ、労働者全体の健康向上に繋がりません。

本記事では、中小企業こそ取り組むべき健康経営についてその定義やメリット、健康経営が生まれた社会的背景について詳しく解説します。

 

また、実際に健康経営に取り組むとする企業のために、健康経営に取り組むためのステップや、参考になる企業の取り組み例も説明します。自社に取り入れられそうな内容から順番に進めていき、社員が長く働ける環境を少しずつ整えていきましょう。

 

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康に企業が戦略的な投資をすることで組織全体を活性化させ、業績を上げることを目標とした会社経営のことです。これまで自己責任としていた従業員の健康管理を企業の経営課題として捉える点が大きく異なります。健康経営の考え方は、1980年代、アメリカで心理学者であり、経済学者でもあったロバート・H・ローゼン博士が唱えた「ヘルシー・カンパニー」という思想がベースです。

「健康的な従業員こそが収益性の高い会社を作る」というヘルシー・カンパニーの考え方は、少子高齢化が深刻化しつつある現代の日本で「健康経営」として発展しました。

それでは、健康経営の定義とメリットについて、詳しく解説していきましょう。

 

定義

健康経営の定義については、経済産業省の定義と、日本公庫総研レポートで提示されている定義の2種類を紹介します。

 

従業員の健康管理を経営的視点から戦略的に実践

経済産業省は、健康経営の推進ページの中で、健康経営について以下のように定義しています。

“「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。”

引用元:経済産業省 健康経営の推進ページ 「1.健康経営とは」より抜粋l

 

従業員の健康管理に対して企業が投資対象としてお金をかけ、生産性向上や業績アップなど企業経営の点からも戦略的に実践しよう、という点がポイントです。企業側により自主性が求められている点が、ロバート博士の「ヘルシー・カンパニー」から発展して違ってきた部分と言えます。

では、「従業員の健康」とは具体的に何を指しているのでしょうか。

 

従業員の健康とは「身体」だけではなく「精神」も健康であること

「従業員の健康」について詳しく説明している資料が、2015年に公開された「日本公庫総研レポート No.2015-6『中小企業の健康経営』」です。

レポート中では、健康経営の定義として、ここで指している健康が身体だけではなく、身体と精神の両方が健康である状態だと定義しています。これまでは、身体の健康が優先される傾向にあり、精神的な疾患については自己責任であるような扱いをする企業が少なくありませんでした。しかし近年、メンタルヘルスの問題がクローズアップされ、精神も健康でなければ健康とは言えない、と認識が改まってきています。「健康」の定義をわざわざ「身体と精神の健康」と定義づけている点はしっかり押さえておきたい点です。

労働者の健康管理については、労働安全衛生法にも定義されています。健康経営の健康は、労働安全衛生法を守ることは大前提として、さらに個々の企業で自社に合わせた取り組みをしていくことになります。

 

メリット

健康経営を取り入れる企業側の主なメリットは、生産性の向上と医療費節約による保険料減少です。従業員が心身共に健康なら、仕事のパフォーマンスはかなりの向上が見込めます。逆に、メンタルなどに不調を抱えている場合、出勤はできても生産性はかなり下がるでしょう。気分よく働ける環境は、従業員ばかりではなく会社にとっても大きなプラスです。

 

また、保険料は、従業員の年齢が高くなってきたときに大きな差が出る可能性が高くなります。定期的な健康健診によって糖尿病が見つかっても、症状が重くなる前に対策をすれば、通常の仕事が続けられます。

しかし、健康を気にかけず糖尿病に気づかないままでいると、健康に支障が出るような症状に見舞われてしまい、治療費がかかるかもしれません。

また、経済産業省よって健康経営優良法人と認められることで、労働力確保がしやすくなる点もメリットです。経済産業省は毎年「健康経営優良法人」の認定も行い、健康経営の啓蒙にも努めています。2018年に認定を受けた企業数は以下の通りです。

 

  • 大企業大規模法人部門(ホワイト500):541法人
  • 中小規模法人部門:776法人

他にもメリットはいろいろありますが、それはまた後ほど詳しく説明します。

ここまでで、健康経営の概要について解説してきました。では、どうして健康経営という考え方がここまで強く推進されるようになったのでしょうか。

 

健康経営の社会的背景

ここのところ急に政府が健康経営を重視しだした背景は、ここまでも少し触れてきた通り、少子高齢化の進行度合いによるものです。少子高齢化をさらに突き詰めると、健康経営の社会的背景は2つの観点から説明できます。

 

  • 生産年齢人口の減少
  • 従業員の高齢化

この2つの背景について、詳しく解説します。

 

生産年齢人口の減少

生産年齢人口の減少は既に深刻な状況です。2014年に総務省が発表した「平成26年版 情報通信白書のポイント」中に、日本の高齢化の推移と将来推計についてのグラフがありますのでご覧ください。 business_157

出典:総務省「平成26年版 情報通信白書のポイント」 図表4-1-2-1 我が国の高齢化の推移と将来推計

 

このグラフ中で15~64歳の生産年齢人口は、1995年の8,717万人をピークに、年を追うごとにどんどん少なくなっていく様子が分かります。2025年には、高齢化率が30%を超え、若い層がどんどん減少していくという状況です。

中小企業に身を置いている方なら、労働者の確保難しい状況になっていることを痛感することも多いのではないでしょうか。2018年度版の「中小企業白書」によれば、2013年第4四半期以降、全業種で「人手が不足している」と回答した企業が「過剰」と答えた企業を上回っています。

また、経営上の問題点に「求人難」を挙げる企業が、バブル期の80年代後半から90年代前半にかけての時期と同レベルにまで増加中です。

 

このように、労働力不足は具体的な数値としてはっきり表れており、中小企業ではより深刻化している様子が分かります。

 

従業員の高齢化

新しい労働力が確保できないままでは、従業員の高齢化も大きな影響を及ぼします。1980年では55歳以上の労働者は全体の16.1%に留まっていました。しかし、現在では29.5%まで上昇しています。この状態はしばらく続くでしょう。高齢化すると、どうしても健康面での問題が出やすくなります。健康を悪化させてからでは遅いため、今から戦略的に従業員の健康を守っていかなければ、事業の継続が困難になることが予想されるのです。

ここまでで、健康経営の社会的背景について説明しました。人手不足の上に、現在働いている従業員の健康まで悪化させてしまうと、経営そのものができなくなる危険性もある状況から、健康経営は推進されるようになったのです。

では、健康経営を実施することで、どのようなメリットがあるでしょうか。 business_153

健康経営を実施するメリット

企業が健康経営を実施するメリットは、先でも少し触れたように以下の5つがあります。

 

  • 業務への集中力アップ
  • 健康への関心・知識の向上
  • パフォーマンスの向上
  • 会社全体での働き方改革
  • メンタルヘルスケア効果

順番に詳しく説明していきましょう。

 

業務への集中力アップ

従業員が健康だと、業務への集中力がアップし、生産性の向上につながります。誰しも、体調がすぐれないときはやる気がでません。無理をして出社をしても仕事の能率が上がらず、体調もなかなか元に戻らない、という悪循環に陥る場合もあります。仕事に集中できないため、ミスも多くなり、ミスの対応でさらにコストがかかることもあるでしょう。身体の具合だけではなく、精神的な疲れも仕事のミスを引き起こしやすい病気です。

特に精神的な疲れは目に見えないだけに従業員本人もかなり悪化するまで自覚症状がありません。メンタルヘルスについては、自動的に検知する仕組みを組み込むことが重要です。体調が悪い場合は、一定期間休養することで、健康も仕事のパフォーマンスも元に戻り、トータルで見たときかえって会社にとってはプラスになります。

 

健康への関心・知識の向上

健康管理を取り入れることで、従業員自身が健康への関心を持ち、知識を向上させて健康を保てるようになります。また、経営者自身も、自分の健康を振り返る機会が多くなるでしょう。健康経営の一環で健康診断へ定期的に行くようになれば、自分の身体がどのような状態かが把握できます。その結果、自分の心身をきちんとメンテナンスしなければいけない、というリテラシーの向上につながり、早めの治療で医療費も抑えられる可能性が高くなるのです。まったく健康な人よりも、何かしら持病があって定期的に通院している人の方が、結果的に健康寿命が長いとも言われます。健康について詳しくなり、健康を保つ行動を自然と撮れるようになるのも、健康経営のメリットです。

 

パフォーマンスの向上

会社全体のパフォーマンスの向上も、健康経営を取り入れるメリットのひとつです。従業員一人一人が健康なら、採用コストも必要最低限で済みます。また、新しい従業員を採用した場合も、ベテランが現場で実践的な教育を行えるため、効率よく技術な情報の伝達が可能です。

もし、従業員が不健康で、欠勤がちだとか席についていてもメンタル面や花粉症などの不調で、仕事が進まない状態だと仮定します。この状態では、その従業員が把握している仕事は滞りがちで、休む時は引き継ぎコストがかかり、周囲の従業員の負担感が増すでしょう。

また、メンタル面や花粉症など集中しづらい病気の場合は、仕事のミスが増えて業務効率がかなり下がります。従業員本人もミスをすることで自信がなくなり、パフォーマンスがかなり下がってしまうかもしれません。

 

そのような従業員のフォローを怠らずに健康管理をしていくことで、離職率も下がり、結果的に採用コストも下がります。busines_156

社全体での働き方改革

健康経営を取り入れると、会社全体での働き方改革につながります。中小企業では、社長や経営陣との距離が近く、上層部が遅くまで帰らない働きかたをしていると、部下も帰りづらい環境になってしまうものです。中小企業が健康経営を取り入れるためには、社長以下全員が取り組むことで初めて可能となります。社長や経営陣がオーバーワーク気味ということは、仕事量のマネジメントができていないということです。このような状態では従業員にも大きな負担がかかっていることが多く、健康経営とは程遠くなってしまいます。

中小企業で健康経営を取り入れる際は、自然と全社で働き方改革が促されるでしょう。

 

メンタルヘルスケア効果

健康経営を取り入れると、これまで対応できていなかったメンタルヘルスケアに関する効果も期待できます。中小企業では、依然メンタルヘルスの取り組みができていない企業が少なくありません。厚生労働省が発表した2017年度の「平成29年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」内の資料でも、中小企業はメンタルヘルスの取り組みが完全には浸透していない様子がうかがえます。

調査結果では、1~29人以下の企業は47.0%、30~49人以下の企業では31.6%が、メンタルヘルス対策に取り組んでいないと回答。小規模では取り組みが難しい現状が浮き彫りとなる数字です。

健康経営を取り入れる際は、産業医や健康関連の外部団体と連携しながら社内でメンタル不調者出さないようにするための具体的な助言などを得て仕組み作りを進めます。そのため、自然とメンタルヘルス対策ができるようになるのです。健康経営を取り入れたとき、企業にもたらされるメリットについて解説しました。メリットについて十分に確認できたため、次に健康経営に取り組む5つのステップについて紹介します。

 

中小企業が健康経営に取り組む5つのステップ

健康経営に取り組むにも順番があります。ひとつひとつ段階を踏んで無理なく取り組むための5つのステップを健康経営優良法人認定制度の「健康経営優良法人2019(中小規模法人部門)認定基準」を元に解説します。

 

健康経営優良法人2019(中小規模法人部門)認定基準における5ステップ

健康経営優良法人認定制度では、大規模法人と中小規模法人でそれぞれ独自の認定基準が分けられています。認定基準は以下の5つが定められていて、条件をクリアすることで健康経営優良法人の認定が可能です。

 

  1. 経営理念
  2. 組織体制
  3. 制度・施策実行
  4. 評価・改善
  5. 法令遵守・リスクマネジメント

以下が認定基準の具体的な内容です。

 

 

出典:経済産業省 健康経営優良法人認定制度 健康経営優良法人2019(中小規模法人部門)認定基準

それぞれの認定基準は、健康経営を進めるステップにも通じるものがありますので、認定基準ごとに具体的な取り組みを結び付けて解説していきます。

 

健康宣言を社内外へ発信

最初にするべきことは、認定基準の「経営理念」(必須)で定められた内容です。

 

  • 健康宣言を社内外へ発信
  • 経営者自身の健康診断受診

これから、健康経営に取り組むという所信表明とともに、自ら健康診断を受けてその宣言を実行します。

 

健康経営担当者を設置

次に、認定基準で言う「組織体制」(必須)を決めます。中小企業の場合、担当者を決めればOKです。ただ、単に担当者を決めるだけはなく、産業医を定める、健康経営アドバイザーなど健康づくりに役立つ外部サービスの利用までを決めることばポイントです。

 

施策内容を決めて実行する

ここからは、認定基準「制度・施策実行」(条件あり)のフェーズです。自社の状況を見据えながら、施策内容を決めて実行します。 「制度・施策実行」は、自社の状態把握から健康経営の土台作り、具体的対策の3段階に分けた施策があります。順番通りにやっていくことで、自然と自社に合った健康経営の対策が可能です。

1.自社の健康問題の把握と必要な対策の検討

人数の少ない会社なら直接聞くか、アンケートを実施するかして、自社の健康問題を確認します。確認方法は、定期健康診断の受診とストレスチェックである程度把握可能です。健康診断の受診率が低い場合は100%受診を目指して対策を進めながら、健康課題を探ります。

健康診断やストレスチェックから問題が把握できたら、優先度の高いものから対策を検討しましょう。この辺りは、外部サービスもうまく利用して問題を分析すると良いでしょう。

 

2.健康経営の土台づくり

健康経営の土台づくりは、ヘルスリテラシーの向上やワークライフバランスの推進など、自社にとって傾向経営を進めるうえで重要と思われる対策を優先してください。認定基準では、以下の4つのうち2つを実行すればOKです。

 

  • ヘルスリテラシーの向上
  • ワークライフバランスの推進
  • 職場の活性化
  • 病気の治療と仕事の両立支援

ここまでで健康経営の土台が完成します。

 

3.従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策

最初に分析した内容を元に、具体的対策を実施します。受動喫煙対策は認定基準で必須です。その他は任意で、健康増進・生活習慣病予防対策やメンタルヘルス対策、過重労働対策など自社の健康問題から浮き彫りになった部分を改善するべき対策を決めて実施しましょう。

 

実行した内容の評価及び改善点の洗い出し

具体的な対策を実行したら、その実行結果を評価し、改善点を洗い出します。このステップは、認定基準で言う「評価・改善」(必須)に当たります。実際に従業員の健康状態が改善したかどうかは、毎年定期的に行いましょう。対策をやりっぱなしでは、健康経営として成功とは言えません。アフターフォローをしてよりよい対策を策定し、実践するという繰り返しが大切です。

 

法令遵守・リスクマネジメントの実施

認定基準の「法令遵守・リスクマネジメント」に当たる部分です。これまでの結果を踏まえて、以下の内容について、自主申告ですが報告します。

 

  • 定期健診の実施
  • 特定健康診査と特定保健指導の実施
  • ストレスチェックの実施(50人以上の事業所)
  • 従業員の健康管理に関連する法令に違反していないこと

 

ここまでで、健康経営に取り組む5つのステップを紹介しました。では、健康経営にかかわる経営者、管理職、一般従業員は、それぞれどのような役割を分担するのでしょうか。 business_155

健康経営のための役割分担

ここまで説明してきた健康経営に取り組む5つのステップは、会社全体で協力して進めていかなくてはなりません。そこで、経営者、管理者、一般従業員はどのように役割分担をすればよいのかについて解説します。それぞれの立場で、健康経営をうまく進めるようできるところからやっていきましょう。

 

経営者の役割

経営者の役割は、自らが健康経営を成功させるという強い意志を持ち、リーダーシップを発揮することです。最初のステップで健康宣言をして健康診断を受ければ終わりではありません。健康経営の担当者は、経営者自身か、経営者と同様経営の視点が持てる上層部の人を指名するのも経営者の仕事です。自社の健康問題を検討する時や、具体的な対策を決める際も、担当者や産業医など外部の意見を聞きながら、一緒に考えてください。

また、経営者にしかできないこととして、同業他社の経営者から、健康経営についての取り組み状況をヒアリングしましょう。参考になる施策があれば、自社にも取り入れるかどうか検討してみてください。

 

管理者の役割

管理者は、つい仕事のことを考えて自分も部下も無理をさせがちなポジションです。しかし、管理者自らが健康経営に関心を持ち、対策を率先して進めましょう。遅くまで上司が残業していると部下も帰りにくいので、定時で帰るよう心掛けるだけでもずい分と職場の雰囲気は変わってきます。部下とのコミュニケーションを大切にし、職場環境を整えることで、メンタルヘルスケアにもなります。

 

従業員の役割

従業員の役割は、第一に自身の健康を意識し、ヘルスリテラシーの向上に努めることです。インフルエンザの流行時期は予防接種をして、マスクで罹患しないように注意をする、といった対策をひとつひとつ実践することで、自分と職場の健康を守るように意識しましょう。

また、自分から健康問題に関連する情報は積極的に発信して、会社の対策をうながすことも重要です。従業員の立場だからこそ気づくことがたくさんあります。自分が気づいたことを発言することで、他の従業員も助かり、職場全体の健康につながるでしょう。

 

健康経営に対する社内の役割分担について解説しました。

 

実施例から学ぶ健康経営スモールステップ

では、実際に健康経営を始めるに当たり、具体的にどう進めていけばいいのでしょうか。

東京商工会議所が出している「健康経営ハンドブック2017」で紹介されている、中小企業の取り組み例から、スモールステップを見ていきましょう。

 

1.経営理念

  • 健康宣言の実施
  • 自社の公式サイトやニュースリリースなどで社内外へ健康宣言をする
  • 経営者自身も健康診断を受診

2.組織体制

  • 職場が分かれている場合、職場ごとに健康担当者を設置する
  • これまですでにある制度である安全衛生委員会などを活用した体制づくり

3.制度・施策実行

制度・施策に関しては、さまざまな施策例を多く列挙しています。この施策をすべて実行するのではなく、できるものを選んでやってみてください。

ただし、最初に挙げている「健康診断受診率100%を目指す」と「ストレスチェックの実施」の2施策は必ず入れることをおすすめします。この2施策は、健康経営の土台とも言える部分ですので、地道に取り組みましょう。

 

  • 健康診断受診率100%を目指す
  • ストレスチェックの実施
  • 健診、再検査の時間は出勤扱いにする
  • 健康増進に1日1万歩以上歩くなどといった数値目標設定
  • 過重労働防止策に残業月10時間以内などの数値目標設定
  • クラウドの勤怠管理サービスを使った労働時間の適性把握
  • 従業員向けに健康啓発セミナーを実施
  • 管理職向けに健康セミナーや部下の労務管理などのセミナー実施
  • リフレッシュ休暇の設定
  • 定時消灯の設定
  • 退社日の設定
  • 定期的な社内旅行や日帰りイベントなどの実施
  • 食事会等の懇親会実施
  • 保健師等による保健指導などを実施
  • 保健指導の場所と時間を確保
  • 仕出し弁当や社員食堂での栄養素、カロリー表示
  • 自販機でトクホなどの飲料やお茶などローカロリーの飲料にする
  • 朝礼時のラジオ体操
  • 午後3時のストレッチ体操
  • スポーツ大会の定期的な開催
  • 事業場内の禁煙
  • 受動喫煙被害のない喫煙場所の設置
  • 手洗いの接見以外にアルコール消毒液の設置
  • インフルエンザ流行時のマスク配布
  • インフルエンザなどの予防接種費用補助
  • 長時間勤務の従業員への残業制限と帰宅呼びかけ
  • メンタルヘルス関連の外部カウンセリング窓口の設置と周知

 

スモールステップのイメージはつかめたでしょうか。自社が優先して取り組むべき分野を見定めた上で、できるところからやっていくようにしましょう。

それでは、実際に他の中小企業がどのような取り組みをやっているのでしょうか。健康経営を取り入れている中小企業の事例と、その施策を具体的に見ていきましょう。

 

健康経営を取り入れている中小企業とその施策

健康経営を取り入れている企業とその施策については、大企業の例が多く、中小企業としては取り組みにくいと思われたこともあるのではないでしょうか。ここでは、経済産業省の近畿経済産業局が出している『中小企業における健康経営のススメ~健康経営の実践に役立つ事例集~』から、参考になりそうな取り組み事例を紹介します。

 

株式会社カシフジ(京都府京都市)

株式会社カシフジは、工作機械の製造・販売を行っており、従業員数は210名、設立年は1943年と歴史もある会社です。健康経営の取り組み例はいろいろあり、ユニークなものもあるのでご紹介します。

 

社長が自ら健康経営を推進

カシフジの社長は、自ら健康経営を20年以上けん引しています。もともとよく現場に赴き、従業員の意見を聴いてきたため、従業員とのコミュニケーションも潤滑という社風がある点が特徴です。

 

健康を整えるための「ヘルシー休暇」は最長約半年

年次休暇を最大110日「ヘルシー休暇」として繰り越し可能にしている点もユニークな取り組みです。本人の病気で休む場合、最大日数を連続で使うと約半年休めます。ヘルシー休暇は本人の病気の他、家族の病気や介護でも利用可能と柔軟性がある点も魅力です。

 

健康診断は年2回実施

健康診断は年2回実施し、所見がついた人にはフォローアップを実施。40歳以上は毎年生活習慣病予防健診と5年おきの人間ドック受診、希望者は脳ドックなど各種検査を行っています。補助は出ず自腹ですが、業務時間内の受診などの配慮があり使いやすい制度です。

 

健康維持のためにラジオ体操など体を動かす対策も実施

健康診断ばかりではなく、身体を動かすことによる健康維持の取り組みも行っています。スポーツ大会の開催やラジオ体操、腰痛持ちの従業員が多いため腰痛体操も取り入れています。

 

株式会社システムリサーチ(兵庫県豊岡市)

株式会社システムリサーチは、従業員数118名で1985年創業のシステム開発会社で、自治体や医療機関などの仕事も請け負っています。定時内での仕事を目指していますが、クライアントありきの仕事では、どうしても相手に左右されてしまう点が、健康経営上の課題です。他のIT系企業にもありがちな例として、優秀な従業員に仕事が集中してしまい、体調不良に陥るということもありました。この問題を改善するため、経営課題として従業員の健康維持に取り組むようになったのが、健康経営を始めたきっかけだそうです。

 

経営方針のひとつに「健康経営」を入れる

システムリサーチでは、まず設立30周年記念の年に健康経営を経営方針に追加し、健康経営を始めることを社内外に宣言しました。社内には「健康づくり推進委員会」として6名を選出し、本格的な活動に乗り出しています。

 

自社開発アプリで「健康マイレージ運動」

システムリサーチの取り組みでも大きな特徴は、自社開発アプリを利用して健康経営の取り組みを行っている点です。自治体で行われている健康マイレージ活動にヒントを得たアプリで、自分で決めた健康活動を日々記録するとその内容によってポイントがつきます。ポイントが貯まるとインセンティブとして商品券がもらえるという仕組みです。

 

工成建設株式会社(兵庫県姫路市)

工成建設株式会社は、従業員数30名、1957年創業の総合建設業者です。自治体での土木工事、ガソリンスタンドの建設などを行っています。建設業は喫煙者が多く、喫煙環境の整備を検討していたところ、協会けんぽから強く勧められて、禁煙を健康経営のメインとすることになりました。

 

健康宣言に盛り込んだ「禁煙」と「健康手当」

健康宣言の中で「禁煙」の文字を盛り込んだ工成建設株式会社。トップダウンで「禁煙しろ」というのではなく「禁煙しようかなあと思っているあなたを応援します」といううたい文句で「健康手当」制度を開始しました。

この制度は、禁煙を宣言した社員に月5,000円の健康手当を支給するほか、非喫煙者にも「禁煙サポート手当」として同額の手当を支給するという制度です。8名いた喫煙者のうち、4名は禁煙宣言をして継続中という成果が出ました。 business_154

全従業員が保健師と健康面談実施

健康診断で所見があった従業員だけに行っていた健康面談を全従業員対象に拡大したことも、健康経営としての取り組みのひとつです。保健師は協会けんぽに頼み3日間通ってもらい、身体だけでなくメンタル面も含めたフォローを行っています。

 

小西化学工業株式会社(和歌山県和歌山市)

小西化学工業は、化学メーカーに、中間体としての化学品や機能性化学品を納入している企業です。近年は、後期に使われる部材や人工透析に利用するチューブなどの需要が拡大しています。従業員数は105名、創業年は1962年と50年以上の歴史があります。小西化学工業では、「65歳まで三交代制の勤務を続けられるように」ということを健康経営の課題に据えて、さまざまな取り組みを実施中です。

 

「65歳まで三交代制の勤務を続けられるように」を目標に

プラントは24時間稼働している必要があるため、製造を担当している従業員の勤務形態は三交替制がメインです。そのため、ある程度体力がなければ務まりません。小西化学工業では、製造担当の社員には、65歳まで三交替制で仕事を続けられるよう健康でいてもらいたいと考えています。そのため、「65歳まで三交代制で働けるように」と、健康経営に取り組む流れになりました。

 

まずは禁煙キャンペーンで10名禁煙成功

最初に取り組んだ健康対策は禁煙です。非喫煙者には「非喫煙手当」として月2,000円を支給します。禁煙に挑戦する従業員は、毎月2,000円を半年間支給され、半年の禁煙を達成すると、禁煙成功のボーナスとして5,000円が支給される仕組みです。この取り組みは過去2回実施され、合計10名が禁煙に成功しています。

 

健康チャレンジ運動も実施 歩行計はゲーム感覚で楽しむ

次の取り組みは、協会けんぽ和歌山支部で開催した健康チャレンジ運動です。この運動では、歩行計を貸与して日常生活の歩行の量と質を計測し、他の事業所と3か月間の結果を競います。結果、小西化学工業は好成績を収めたほか、チャレンジ期間中は、従業員同士でコミュニケーションも生まれ職場の活性化にも一役買う成果が出ました。

 

JOHNAN株式会社(京都府宇治市)

JOHNAN株式会社は、従業員数685名、創業年は1968年の中堅企業で、電子部品やフィルム加工など製造系の会社です。健康経営への取り組みは、新社屋に移ったタイミングで健康相談室を社内の新たな組織として作ったことが発端となりました。もともとはメンタルヘルス系のフォローをするためだけに作られた健康相談室でしたが、今では健康相談全般を受け付けるようになっています。現在、JOHNAN株式会社では多くの取り組みが行われているため、いくつかをピックアップしました。

 

健康経営を支える組織は安全衛生委員会が中心

JOHNAN株式会社の健康経営を支える社内組織は、もともとあった安全衛生委員会が中心となって運営されています。安全委員会と健康相談室、産業医、人事部・総務部が関わりあい、綿密な連絡を撮り合うという体制です。

 

メールの返信で再検査確認

健康診断で所見のあった従業員には再検査や細密検査を奨励しています。メールの返信で、再検査に行ったかの確認も行うほか、ハイリスクな所見があった従業員に対しては、産業医面談を必ず行うようにしている点も特徴的です。

 

運動面ではオリジナルストレッチも

また「身体を動かす」という取り組みも多数実施しています。JOHNANオリジナルのストレッチ体操の開発、始業前のラジオ体操、新緑ウォーキングなどのイベントも実施。多くの従業員が身体を動かせるように、さまざまな企画を行っています。

 

毎年1回の血管年齢測定や栄養教室も従業員に好評

その他にも、さまざまな毎年一回の血管年齢測定や、管理栄養士による栄養教室も従業員に人気です。これらの取り組みを利用する従業員が増えることで、従業員の健康増進に一役買っています。

 

まとめ

中小企業にこそ必要な健康経営について解説しました。もう一度、健康経営の定義やメリットなどを振り返っておきましょう。

 

【健康経営の定義】

健康経営とは、授業員の健康に企業が戦略的な投資をすることで組織全体を活性化させ、業績を上げることを目標とした会社経営のことです。

 

【健康経営の社会的背景】

少子高齢化により、生産年齢人口の減少と従業員の高齢化が同時に起こり、労働力の確保が困難になっているため、健康経営がクローズアップされるようになりました。

 

【健康経営のメリット】

健康経営のメリットは主に以下の5点です。

  • 業務への集中力アップ
  • 健康への関心・知識の向上
  • パフォーマンス力の上昇
  • 会社全体での働き方改革
  • メンタルヘルスケア効果

 

【健康経営に取り組むための5ステップ(健康経営優良法人2019(中小規模法人部門)認定基準)】

  1. 経営理念
  2. 組織体制
  3. 制度・施策実行
  4. 評価・改善
  5. 法令遵守・リスクマネジメント

 

従業員の健康について、これまでなかなか対策を講じられなかった中小企業こそ、健康経営を取り入れることで長期的に大きなメリットが受けられます。

健康経営をできるところから始めるためのスモールステップや、同じ中小企業の事例もご紹介しました。参考にできる部分はどんどん取り入れて自社独自の健康経営を進めましょう。

 

 

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